こんにちは!南ポルトガル・アルガルブ(algarve)地方の町、Praia da luz在住。フランス料理、フランス菓子ベースのホームデリバリーをやっています。Algarve はアルガルベ、アルガルヴェと日本語では表記されていますが “アルガルブ” が正しい発音です。

日々のこと、ポルトガル・スペイン・フランス、ヨーロッパのこと。言葉に関しては ⇧「フランス語・ポルトガル語」に別ブログで書いてます。⇧「Serge & Satoshi Home delivery」はデリバリーのFBページです。⇧「Paradores/パラドール」にはスペインのパラドールの滞在記をまとめています。

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2015-09-22

Portugal's sweets

ポルトガルのお菓子と言った時、果たして何がすぐに頭に思いうかぶだろうか?
日本人であれば恐らく「カステラ」、もう少し昔なら「金平糖」あたりだろうかと思う。

でも、もう少し範囲を広げて世界で、となるとちょっと大げさなのでヨーロッパで知られているポルトガルのお菓子と言ったらやはりPastel de nata(パシュテル・ドゥ・タ)だろう。




日本ではエッグタルトという名前で知られているこのお菓子。
周りの生地はパイ生地に似ているけれどちょっと違い、どちらかというと春巻きの皮に似た薄さとパリパリ感。詳しいレシピは知らないけれど、ラードを使っていると思われる。
中のクリームはカスタードクリームを更に濃厚にしたようなしっかりとした味。
食べる時に上にシナモンを振り掛けて食べる人が多いようだ。

代表的なポルトガル菓子はどれも卵黄をふんだんに使ったものが多いので、このお菓子はまさにポルトガル菓子を立派に代表するお菓子と言える。

カスタード好きにはたまらないだろうし僕も時々、無性に食べたくなる時がある。


が、しかし……


ここ、アルガルブでは本当においしいPastel de nataにお目にかかったことが無い。
ポルトガルに住み始めたばかりの頃は色々なところで買って試してみたものだけどどれもことごとく外れ。

それもそのはず、リスボンやポルトでの事情は知らないが、ここアルガルブで買えるPastel de nataはどれも冷凍物の工場で作られた既製品ばかり。
一度などはとあるお菓子屋の軒先にオーブンで温めるばかりのPastel de nataが入った段ボールが置いてありましたよ。“Made in Spain”と書かれて…
う~~ん、いいのかそれで、ポルトガル人!


ということで、ここでおいしいPastel de nataを見つけることはもう半ば諦めてます。
時々、来店されたお客さんにもどこでおいしいPastel de nataが手に入るのか聞かれることがあるけれど、正直に「○○で買えるけれど冷凍品ですよ。」と答えてます。


そんな中、唯一、一軒だけ僕が認めるおいしいPastel de nataが食べられるところ。
それがリスボンのPastéis de Belém(パシュテイシュ・ドゥ・ベレン)です。

サイトはこちら→ http://www.pasteisdebelem.pt/

店はここのPastel de nataを食べるがために訪れた観光客で信じられないほどに賑わっています。
一体どこまで続くのかと思うほどの、まるで迷宮のような店内。
厨房の一部ものぞけます。
ここではPastel de nataだけではなく、その他のポルトガル菓子ももちろんあるのに見渡すと食べられているお菓子はこのPastel de nata一色。
たったこのお菓子一つでここまで人を呼び寄せる。恐るべし!

しかし困ったことにここのPastel de nataを食べてから、他ではもうおいしいと思えなくなってしまいました。

皆さん、Pastel de nataだけはリスボンで食べていきましょう。



ちなみに日本でポルトガルから伝わったお菓子として良く知られている“カステラ”はポルトガルではカステラではなくPão de ló(パォン・ドゥ・ロー)と呼ばれるお菓子。


スポンジケーキのようなお菓子です。
ポルトガル人にお菓子の説明をする時、スポンジケーキやジェノワーズでは理解されることが少ないのでこれらの言葉の替りにPão de ló(パォン・ドゥ・ロー)を使っている、と言うと一発で理解してもらえます。




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2015-09-14

クロワッサンのコツ

せっかく菓子職人として仕事をしているので、お菓子作りに関して何かコツやちょっとしたテクニックを公開できれば・・・

今回はクロワッサンについて。

店を開いてからこれまで4年弱の間にどれくらいのクロワッサンを作ってきたのか数えてみたこともないけれど、どんなジャンルにしろいわゆる職人技というのは何の裏技も秘密もある訳ではなく毎日の積み重ねで出来上がっていくものなのだなぁ、と実感します。
毎日の作業の中で、こうしてみたらどうか、ここを変えてみたらいいんじゃないか、等々。
そして、恐らくそういう積み重ねもなくいきなりいい結果を出せてしまう人が天才と言われる人たちなのでしょうね。

そんな天才ではない自分にとってはとにかく毎日、試行錯誤の連続。



さて、このクロワッサン、そしてパイ生地は家庭で作るのが一番難しいお菓子の部類に入るのではないかと思います。
時間もかかるし、作業するスペースも取るし、涼しい場所が必要だし。

まずバターを織り込むための生地は、前日に作っておくのが理想です。
色々なレシピがあるけれど、この生地の中にもバターを入れるとどういう作用によるのか出来上がった時のさっくり感が増します。
そして使う油脂はもちろんバター。マーガリンは避けましょう。

バターを織り込む作業はその都度、生地を冷蔵庫で休ませながら。家庭用の冷蔵庫はどうしても業務用の冷蔵庫より力が弱いので生地を休ませるのにも時間がかかります。
小麦粉と水を合わせた生地はとにかくしっかり休ませることが大切。ちゃんと休ませてない生地を無理に引っ張って作業すると、焼いたときに見事に引っ張った方向とは逆の方向に縮む結果となります。
どうも生地に抵抗がある、縮みやすいと感じた時は素直に作業を止め生地を休ませましょう。

必要な回数バターを織り込み、その後くるくると巻いてクロワッサンの形にするのですが、ここでの微妙な生地の締め具合も何度も作って体得するしかありません。どんなに生地が完璧にできてもこの巻き方一つで成功と失敗が分かれます。
巻きが甘くてクロワッサンの形をとどめなかったり、引っ張り過ぎて生地が切れてしまったり。
そんなことの繰り返しです。

そしてここで意外なことに気がつきました。
成形をしてからすぐに発酵→焼成と行くのではなく、成形してから一度生地を冷凍する
そして3日から1週間経った後に冷凍庫から取り出しオーブンプレートに並べ十分に発酵させから焼くと、成形してからすぐに焼くよりも良い形のきれいなクロワッサンができます。
家庭でクロワッサンを作ろうという時に1週間も前から作り始めなければいけない、となるとちょっと無理があるかも知れないけれど、よく作られる方は是非一度試してみてください。

数日から1週間、冷凍する間に生地が落ち着くのかしっかり膨らんだおいしそうなクロワッサンができます。
発酵も普通のパンよりも長めにちょっと発酵させ過ぎたかな、というくらいが丁度いいようです。

ただし、3週間あたりを過ぎるとイーストが死んでしまうのかどんどん生地は劣化していきます。
冷凍庫で保存できるのは1週間、長くても2週間でそれまでに焼成まで終わらせてしまいましょう。
クロワッサンが焼ける時の香りは格別

クロワッサンと言ったらフランス。
でも、残念ながらその本場フランスでも本当においしい手作りのクロワッサンを見つけるのは難しくなってきました。
そのほとんどは工場生産されたもの。
フランスでお世話になっている厨房機材専門の卸業者の方の話では、フランスの80%のクロワッサンは工場生産されたもの。自家製を謳っている個人のお菓子屋でもほとんどは冷凍物を仕入れてその場で焼いているだけ、だそうです。
ただ、その場で焼いているのでその匂いに騙されてほとんどの人は自家製・手作りだと思っているそうな。
時にスーパーで見かけるクロワッサンの原材料を見ると、その原材料の多さ、保存料から香料、安価な油脂、中には結局なんなのか分からない物まで。
美味しく体にもいいものを見つけるのも段々と難しくなってきているようです。